この頃ひどくなったのは、漢字や言葉が思い出せなくなったことだ。
出来事や考えたこと、言おうと思ったこと、日付や時間など認知症と同じように覚えていない問題は確かにある。
しかし、それは誰かに教えて貰ったり、言われれば 「ああ、そうか」 と思い出せる点で認知症とは違うと判断できる。
それでも同じように何もかも、頭の中で記憶が曖昧で混濁しているのは間違いない。
私がいま、思い出せないのは病気に罹り始めた頃の状態だ。
悪化しすぎて、 『寝込んで起き上がれなかった』 その時の状態が思い出せない。
ずっと寝たきりで、食事もできず、子どもの世話も何も出来なかった。
その風景は鮮明に覚えているのに、自分の具合の悪さがどれほどのものだったのか想像が着かない。
それは現在、軽快したり回復したり治ったからではない。
病気とうまく付き合う方法を身につけた私は、日常生活に対する見方を変えただけであって、決して体調が良くなったのではなく、むしろ年を追う毎に衰えて悪化する一方でしかない。
どのように日々を送っているのか?
これはずっと訓練してきたことだ。
- 何時に寝ようとも毎日同じ時間に起床する。(一旦目を覚ます)
- 今日やろうと計画したことは今日中に始末する。
- 前日から翌日の予定を確認し、体調の様子によっては変更可能なように予定を組む。
- 体調が悪いと感じたら、無理に実行せずキャンセルできる用事なら後日に予定を振り返る。
- 3日以上予定を先延ばしにしない。
- 世の中の動きと同じように、自分の生活も送る。(例え睡眠障害があっても考慮しない)
- 他人に頼らず、当てにせず、すべて自分のやるべきことだと思う。
- 自分の欠落した機能を理解し、どうすれば可能なのか作戦を立てる。
(例えば、記憶できないものは手帳にすべてをメモしておく。カレンダーに書き込む。壁や目に付く場所にメモを貼っておく。誰かに話しておく。など) - 喜怒哀楽を忘れず、自分の思いに向き合い、自分に正直になる。
- 他人から奇妙だと誤解されるかもしれないと思っても、自分が奇妙ではないと信じる。
- 毎日欠かさずやる事を決める。
- 体調がどんなに悪くても、一日ひとつだけは必ず仕事をする。
(自分の薬を飲むグラスを洗うことだけでも、仕事のひとつとして実行する。) - 楽しいことをする。
- 行きたいと思った所へ行き、やりたいと思ったことはやる。
要するに誰もが行っている当たり前の日常生活を送るだけのことだ。
毎日、食事は作るし、トイレにも行くし、ゴミを片付けるし、掃除もするし、洗濯もするし、食器の後片付けもする。
それは健常者であれ、病人であれ、障害者であれ、すべてやって当たり前のことだ。
でも、病人や障害者にとってそれらはとてもつらく、困難なことでもある。
だからといって嘆いて 『出来ない』 『無理だ』 と言い、どうにかなるものでもない。
大袈裟に物事を捉えて、自己暗示に掛けてしまえば精神的に楽になれる。
誰に対しても言い訳が成立出来る。
しかし、その真実は自分自身に対しての大義名分と言い訳で納得させる材料を揃えられたものであって、何の役にも立たない。
後味悪く残るものは、自己嫌悪だけしかない。
私はこうして訓練した結果、決して満足のいくような日常生活が送れている訳ではないが更に身体的、精神的双方にかなりの負担を強いながら生きている。
それは解っている。
どんどん薄れていく自己感覚や自己認識が私を破壊しているのも解っている。
両腕、両脚にゲートルを巻き、退化した筋肉を補いながら自分の足で歩き、自分の手で物を動かす。
ベッドの上で座る生活ばかりしているしかない程の動けない身体は、胴体(体幹)の筋肉を衰えさせ、全身を支えるのが難しくなった。
だから歩くと背中が痛む。
自分が具合悪いことさえ鈍感になって、何でも出来るかのように錯覚し、何の防御もしない。
ただ不自由や苦痛に対して対処しているだけだ。
言いたいことはたった一つ。
それは自分がどれくらい具合が悪くて、病人だという自覚が殆ど理解出来なくなった。
もう、身体や精神的なものが悲鳴を挙げているその感覚すらも解らなくなった。
それだけだ。
だから私は泣かない。嘆かない。頼らない。助けを求めない。甘えない。
だって、その理由が解らないから。
だって、今まで 『つらい』、『出来ない』 そう思って助けて欲しいと願った時に誰も居なかったから。
すべて、誰にも教えて貰えず、自分で考えて乗り越えてやるしかなかったから。
悲劇のヒロインに堕ちるのが嫌だから、私は戦う。
誰かに同情されて、自分から媚びて、助けて貰わなければ生きていけない様な人生は、いつか捨てられて一瞬にしてすべてを失い、世の中の一員として生きていけなくなることを知っていた。
この揺るがない強さを手に入れた代わりに、払った代償はすべての機能を失っていく矛盾だった。
失認、失行、失語。
錯誤と錯覚だらけの中で、私は意識を失わないようにまだ努力し続ける。
私も思考力低下で、漢字や前のできごとを思いだせない。
返信削除今一番つらいのは心
私は今どん底で立ち上がれるかわからない
あなたは強い!